恋愛救助隊

　「インドでトレッキングしてると超人になれるんだ！」
これは、実際にインドヒマラヤをトレッキングした友人の言葉です。

　インドも、ガンジス川やアラクナンダ川を車でさかのぼっていくと
ヒマラヤへとたどり着きます。
美しい山岳や湖、高山植物などに囲まれたトレッキングコースは
世界的にもとても人気があります。
ヒンズー教やシーク教の聖地でもあるため
そこには神秘的な雰囲気もただよいます。

　私の友人が、そのコースとたどったかどうか
もう今となっては忘れてしまいましたが
彼は、インドから帰ってからとても興奮した口調で
そのトレッキングの様子を話してくれました。

「重たいリュックを背負って酸素の薄い山道を
えんえんと歩くんだ。
景色はきれいだけど肉体的にはとてもつらい。
でも、ずっと歩いていると、ふっと身体が軽くなるんだ。
『歩く』というより、『飛び跳ねる』って感じ。
まるで月面を歩くみたいに身体がポーンポーンって…」

　それを聞いたとき、「そういうもんか」って思いました。

　記憶がさだかではありませんが、
ヨガかなんかに伝わる秘術で
「中空を凝視し飛ぶように走る秘術を使えば1日に何千里も移動できる」
みたいな話があって、
インドには、そんな神秘的なことを可能にするのかなぁ
などとのんびり聞いていました。

　でも、今ならわかります。
その感覚は脳内麻薬がもたらす感覚です。
おそらく、スーパー・ランナーズハイのような状態なのだと思います。

　いわゆるドラッグとかクスリによって
とても感覚が鋭敏になる状態があるといいます。
音や光が尋常ではない解像度で認識できるのだそうです。
　たとえば三半規管あたりが、とても鋭敏になり
「普通に歩いている」状態を、
「飛んで歩いている」ように感じる瞬間があるのかもしれません。

　こうして考えると、「空中浮揚」とか
いろいろな宗教的神秘体験なども
脳内物質によっていろいろ説明できるような気がします。

そして、もちろん、恋愛もそうなのです。

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